泌尿器科はおしっこの通り道である「腎臓・尿管・膀胱・尿道」の異常が対象です。ですから、診察前に必ず検尿をします。
男性では、「前立腺・睾丸・陰茎」も含まれますが、やはり尿所見は、その病状に直接あるいは間接的に関与しますので検尿は必要です。「前回尿検査したから今回はいらないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、原則的に毎回させていただきます。例えば、血圧をコントロールされている患者様は、たとえ調子が良いと思っても診察のたびに血圧を測りますね。
それと同じように、自分では大丈夫と思っても、泌尿器科疾患の病状の変化をおしっこは"語ってくれる"のです。
採尿できれば結果が出るのに15分ほどです。すみませんが、ご協力お願いします。
「オシッコの出が悪いのは年のせいと思っていた」という方が多いですが、一方で「オシッコの出はいいのに要精密検査とか要治療と書かれて」と困惑しながら受診される方もいます。前立腺は大きければ治療が必要なのでしょうか。答えはNoです。
前立腺がどんなに大きくても尿道を狭くしたり、膀胱を押し上げて刺激しなければ症状は出ません。
前立腺が正常の5~6倍に肥大していても排尿状態に全く異常がない場合はいくらでもあります。
排尿障害があってこそ治療が必要と思って下さい。逆に前立腺は軽度の肥大なのに高度の排尿困難を伴う場合もいくらでもあります。ですから、前立腺の大きさとオシッコの出の悪さは比例しません。
前立腺が大きいから薬を飲みましょうというのは専門医ではありませんね。
因みに自分のオシッコの出方が良いのか悪いのかわからない場合もありますね。
専門医では排尿の状態を客観的に判定してくれる、尿流量測定という装置があります。
器械の付いたトイレに排尿していただくだけでわかりますので、痛くも何ともない検査です。
一度お試しになってはいかがでしょうか。次回は前立腺肥大の具体的な治療法をご紹介いたします。
前立腺肥大の程度によって異なります。
患者様にとって最も適切な治療法は専門医が前立腺の状態・排尿状態をチェックしてお薦めしますが、ここでは具体的な治療法を簡単にお話します。
1.薬物療法
前立腺肥大の症状は大きく分けると2つになります。
1つ目は尿道が狭くなるためにオシッコの勢いが悪くなる事で、2つ目は膀胱を下から押し上げて刺激する事によってオシッコが近くなる事です。このような影響を改善させるものとして、薬物療法の第一選択薬は尿道や膀胱の出口をリラックスさせるα遮断薬というものです。
薬の名前としては、ハルナール・ユリーフ・フリバスがこれに当たります。
非常に効果はあり、この薬の開発により前立腺肥大の手術が激減してしまいました。
副作用としては、血管もリラックスさせるため、低血圧の方ではめまいや立ちくらみがありえますが、その頻度は少ないです。
その他の薬としては、漢方薬や生薬がよく使われます。
因みにノコギリヤシというものが市販されていますが、日本では薬品としては認められていないため、違う植物が使用されています。
効果としては前立腺のむくみをとると考えて下さい。
また、新薬として、平成21年9月から前立腺を小さくする抗男性ホルモン薬のアボルブが発売され、期待されています。
以前にも同じホルモン薬のプロスタールがありましたが、脳梗塞を起こしやすい等の副作用などから使用に注意が必要でしたが、アボルブは使いやすい薬です。
但し、前立腺癌を早期発見するためのPSAを下げてしまったりなど、使用には専門医の判断が必要です。
専門外の医師が処方することで、前立腺癌の発見を遅らせてしまうことが心配されています。
それからザルティア(タダラフィル)という薬が最近よく使われるようになりました。実はこの薬は勃起不全治療薬のシアリスと同じものを少量にした薬(治療量の1/4)です。
患者様にはバイアグラと同じと説明しています。バイアグラは陰茎の血管拡げて勃起を促しますが、少量使用することにより尿道を拡げたり、膀胱・前立腺の血流を改善して急な尿意も和らげてくれます。
アンチエイジングへの効果も期待されています。非常に有望な薬ですが、発売時に週刊誌などが騒いでしまって当初は使いづらかったです。バイアグラは保険外ですが、自分は前立腺肥大だと偽ってザルティアを処方してもらえば勃起不全を保険診療してもらえると言うのです。悪知恵ですね。もちろん当院では排尿症状に応じて適切に処方させていただきます。
2.手術療法
以前はお腹を切って前立腺の内部をくり抜いてしまう手術をよくやりましたが、現在はまず切られる事はありません。
最も効果的で且つ確立された手術は、経尿道的前立腺切除術(TUR-p)です。オチンチンの先から内視鏡を入れて尿道を狭くしている前立腺を中から電気メスで削り取ってしまいます。
泌尿器科医のいる病院ならどこでもやっている手術です。ただ、この手術の問題点は出血です。
心臓が悪いなどであまり出血してはいけない場合には注意が必要です。最近はこの手術の進化系がいろいろ出てきています。
電気メスの代わりにレーザーで前立腺をくり抜いてしまうHOLEPというものがその代表で、期待されています。
ここで、やってはいけない治療もお話しておきます。それは温熱治療です。麻酔も入院も不要のため、かなり宣伝されていました。
マスコミでもとりあげられて、一時は効果も期待され、費用も当初は保険上本来の手術より高い点数がつきましたが、その治療成績はさんざんでした。何回でも繰り返して実施できるため、一部の医療機関の金儲けの手段にもなりました。現在ではよほどの事がなければやるべきではないでしょう。
本当に要点だけ述べましたが、前立腺肥大の治療は患者様それぞれです。必ず信頼できる専門医にご相談下さい。
厚生労働省がPSA検診の有用性を疑問視する発表をしたのをご存知な方がいらっしゃると思います。
PSA検診で早期に前立腺癌がみつかった人も、進行して症状が出てからみつかった人も治療成績が変わらないから、あえてPSA検査をがん検診として推奨しなくても良いというのです。
しかし、ちょっと待って下さい。他の癌は発見された時に既に進行し転移がある場合には余命が1年も無い事が多いでしょう。
一方で前立腺癌は発見時に転移があっても非常に良く効く治療法(ホルモン療法)があるため、くすりの効果次第では5年あるいは10年元気でいられる患者様もざらです。
厚生労働省は"生存率"でPSA検診の有用性を見ているため、「前立腺癌の早期発見不要論」になってしまったのです。どうでしょうか?
前立腺癌をPSAで早期発見し完治させて元気な人生と、見かけは元気でもいつホルモン療法が効かなくなるか心配しながら生きていく人生とが同じとは思えません。
泌尿器科学会ではやはりPSA検診を推奨しております。PSA検診はただ血液を採取するだけです。
前立腺癌は血液検査でわかる唯一の癌といえるでしょう。是非、受診してください。
お母様方より男の子のオチンチンの相談をよく受けます。
もちろん子供は包茎ですが、剥けば亀頭が出る「仮性包茎」が正常です。
相変わらず専門医ではない医師や雑誌などから間違った知識が結構広まってますので、簡単にご説明いたしますと、皮(包皮)を剥いていった時に、一部でも亀頭が見えるお子さんはまずは心配ありません。
完全に剥けないとダメだと言って、子供が痛がるのに無理やり剥いてしまう医師がいまだにチラホラいるようですが、かえって軟らかい包皮に傷を作ってしまい、硬く狭くなり、手術が必要になってしまいます。
その場合の手術はおとなにやる美容的な包茎手術(環状切除)ではなく、背面切開という剥けるようにするだけが目的の手術です。これはかえって見栄えが悪くなりますので、本当に必要な場合(包茎のために炎症をしばしば起こしたり、おしっこがどこに飛ぶかわからないでトイレをしょっちゅう汚す)のみに適応になります。
皮が剥けない場合には、まずは翻転指導いたします。お風呂から出て、皮が軟らかくなっている時に、狭いところを少しずつ伸ばすのです。無理をしてはいけません。子供が痛がったり、出血させたりしては先程のむりやり剥くのと同じになってしまいます。剥けるようになるのに半年位はかかると思いましょう。
また、この時に軟膏を使うと効果的です。狭くなっている所の皮を軟らかくするのですが、外国では女性ホルモンの軟膏が使われます。残念ながら日本では製品化されていないため、副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟膏を使います。
極々少量しか使いませんので、副作用は心配いりません。どうぞご相談下さい。くれぐれも無理には剥かないで下さい。
尿管結石、痛いですよね。
初めてこの痛みを経験した患者様は、このままでは死んじゃうと思って救急車を呼ぶくらいの辛さです。
病院に着くと痛みが治まってしまうことも多々ありますが、また不思議なのは結石の大きさと痛みは比例しないことです。
ものすごい痛みで七転八倒したのに排石してみたら砂粒ほどで驚いたりします。このような小さな石は、痛みをコントロールしながら排石を促すのですが、問題は自然に出るか微妙な結石です。
一般的に、1cmまでの大きさなら自然に出る可能性があるといわれます。
しかし、石の表面がツルツルしているかギザギザしているかでも違ってきます。
私は勤務医時代に、泌尿器科を含めて他の医師から「この大きさなら自然排石を待ちましょう」と言われ続けて、結局は腎機能障害が残ってしまった患者様を結構診てきました。
たかが石でもきちんと治療していかないと腎臓がダメになってしまうこともあります。本当の専門医を受診しましょう。
当クリニックではこれまでの豊富な経験からきちんとした治療をご指示させていただきます。
具体的な方法は「尿管結石の治療について2」に述べさせていただきます。
以前は結石はお腹を切って摘出していました。小さな病院でも週に一度は尿管結石の手術があったものです。
その後、背中から腎臓に人差し指くらいの太さの穴を開けて結石を取る方法(PNL)が開発され、続いてオシッコの出口から内視鏡を挿入していく経尿道的尿管結石摘出術(TUL)が世に出ました。
どちらも一長一短あり、当初はいろいろなトラブルがありました。その話はまた機会があったらアップします。最後に画期的と言える、体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)が開発されました。
原理は、戦争中のドイツが海中の潜水艦を攻撃する兵器として開発したものです。
すなわち、人間の身体が「海」で、結石が「潜水艦」です。
海上に相当する体の表面から、衝撃波が水分の多い肉体を伝わって、硬い結石を破壊するわけです。
当初はそんなもので結石が割れるはずはないと半信半疑でした。
導入時は保険適応がなく、100万円位請求されたりしてましたが、現在は結石1個に対しての砕石治療に3割負担の患者様で自己負担約6万円です。一般的には通院あるいは一泊入院程度で破砕できます。
もちろん、ESWLも万能な治療法ではありません。結石が長期間同じ位置で動かないと、尿管壁に癒着してしまいますので、それからESWLを施行しても癒着部の結石は流れません。
また、尿管に結石がつまって腎臓が腫れた(水腎症と言います)状態のまま長期放置してしまうと、それから結石を治療しても腎臓機能が完全に回復しません。
更に怖いのは、腎機能が低下してしまうと結石の痛みがなくなってしまうため、患者様が排石したのではと勘違いして腎機能を失うことがあることです。たかが結石とは言えません。きちんと経験豊富な泌尿器科で治療を受けて下さい。
なお、現在はTULが器械の進歩により以前と比べてはるかに安全かつ効率的に実施出来るようになりました。
体外からの衝撃波よりも結石に直接レーザー(昔は超音波や振動波でした)を当てる方が破壊力も強く確実なのは言うまでもありません。麻酔が必要などの問題点はありますが、最近はESWLよりも推奨されています。
患者様の結石の状態に応じて説明させていただきます。
「先生、オシッコが近くて。今度バス旅行に行くのでどうにかなりませんか?」
かかりつけの内科の先生にそう言ってもらった薬を飲んだら旅行中にオシッコが出なくなり、救急車で受診され、管で尿を1000mlも抜いてもらった女性がいました。もらった薬はいわゆる頻尿・尿失禁改善剤です。
「頻尿・尿失禁改善剤」とは抗コリン薬と言って、最近話題の薬で、泌尿器科専門医でなくても安易に処方されているお薬です。
この薬は、膀胱をリラックスさせ、締まりを良くする効果があるので、オシッコが近くて(頻尿)、トイレまで間に合わずに漏れてしまう(切迫性尿失禁)患者様には非常に効果のある薬です。
しかし、膀胱をリラックスさせると言うのは裏を返せば膀胱を麻痺させるため、元々尿の勢いの悪い方の場合、先程のように尿が出なくなる(尿閉と言います)可能性があります。
例にあげた患者様は糖尿病があり、自分では自覚はありませんでしたがその合併症のために普段から残尿が100ml程度ある患者様でした。尿の勢いが悪いのは年のせいと思っていたようです。
この他にも、男性では前立腺肥大のある場合には、抗コリン薬が安易に処方され、かえって排尿障害を悪化させている例が非常に多いです。
また、抗コリン薬は忘れっぽくなるなどの問題点も指摘されており、現在はβ3作動薬というものが高齢者では推奨されています。
泌尿器科では両者を症状に応じて適切に使い分けております。きちんと専門医に受診されることをお薦めします。